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香に、昔の春を思召、彼昌泰の年の末に、荒人神と成らせ給ひし心づくしの御旅宿も、, 姿となり、艶なる容引替へて、幽にして住せらる、今日を限りの命共がなと、思召ける, 悲の、言問かわす人もなし、只夜の嵐の松の間に音つれて、夢を覺され、主忘れぬ梅が, もなし、落花の雪に蹈迷ふ、片野の春の櫻がり、紅葉の錦を衣て歸る、嵐の山の秋の, 今は君の思に擬へて、千々の思に堪かねて、歎悲む其有樣、押計られて哀れなり、是に, 又引替て、同思ひに忠義は、遠里の囚と成て、逆旅月に吟て、歸らぬ旅の悲さに、浪路, 鴈、堪へぬ歎きに、青絲の仕疎にして、早晩の間に老は來ぬらんと被怪、玉顔徒らに、, 暮、一夜を明す程だにも、〓寢となれば懶きに、恩愛の契淺からぬ、我故郷の妻子をば、, 行末へ知らず思置、思はぬ旅に出給ふ、海邊近處には、長汀の秋の月冷く、澤邊阻, 遙かに隔たりし、鄙の住居を想像、心苦しく誘ひつる泪は、更に數ならずと、袂の乾隙, 處には、嶺山毒霧身を侵し、雨を含める孤村の樹、夕べを送る遠寺の鐘、哀を催す時し, 雪膚も何かせんと、忍びやかに立出て、鎌倉尼寺に入て、簪〓たる黒髮を押切て、墨染, ければ、内證深心の法施を奉り、底墓となく行程に、伯耆國に著きければ、方の如く別, もあれ、雲間の山に雪見へて、遠き峯あり、警固の武士に尋ぬるに、伯耆の大山と答へ, 元和八年六月十九日, 一八四
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- 元和八年六月十九日
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- 一八四
注記 (16)
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